耐震診断が必要な工場・倉庫とは?耐震改修のポイントも解説

公開日:2026/08/15
耐震診断 工場 倉庫

工場・倉庫の耐震性は、地震による被害を防ぎ、従業員の安全や事業継続を守るうえで重要な要素です。しかし「耐震診断は必要なのか」「耐震改修では何を行うのか」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、新旧耐震基準の違いや耐震診断の対象となる工場・倉庫の条件、耐震改修の方法について詳しく解説します。

旧耐震基準と新耐震基準の違い

工場や倉庫の耐震性を確認するうえで、まず理解しておきたいのが「耐震基準」です。耐震基準とは、建築物や土木構造物が一定規模の地震に耐えられることを証明するための基準です。

建築基準法に基づいて定められており、基準を満たしていなければ建物を建築することはできません。耐震診断や耐震改修の必要性を判断する際には、この耐震基準が重要な判断材料となります。

旧耐震基準とは

旧耐震基準は、1950年に建築基準法が制定されてから1981年5月31日までに建築確認申請を受けた建物に適用されている基準です。その前身である市街地建築物法には耐震規定がありませんでしたが、1923年の関東大震災を受けて1924年に耐震に関する規定が導入されました。

旧耐震基準では、主に震度5程度の中規模地震で建物が大きな損傷を受けないことを目標としていました。

新耐震基準とは

新耐震基準は、1981年6月1日から施行されている耐震基準です。1978年に発生した宮城県沖地震で多くの建物が被害を受けたことを教訓として、耐震性能が大幅に強化されました。

現在の基準では、震度6強から震度7程度の大規模地震が発生しても、建物が倒壊・崩壊しないことを求めています。なお、2000年には木造住宅を対象とした基準強化が行われましたが、非木造建築物の基本的な耐震基準は1981年改正以降、大きく変更されていません。

旧耐震基準と新耐震基準の違い

両者の最大の違いは、想定する地震規模と求められる耐震性能です。旧耐震基準は震度5程度の地震への対応を重視していましたが、新耐震基準では震度6強から7クラスの大地震でも倒壊しないことが求められています。

そのため、旧耐震基準で建てられた工場や倉庫は、現在の基準から見ると耐震性能が不足している可能性があります。

耐震診断の対象になる工場・倉庫

耐震診断は、旧耐震基準で建てられたすべての工場や倉庫に義務付けられているわけではありません。建物の規模や用途、危険物の保管状況などによって、求められる対応が異なります。

対象となる建物は、大きく「努力義務」「指示対象」「診断義務」の3つに分類されています。

耐震診断の努力義務がある建築物

階数3以上かつ延べ床面積1,000m²以上の工場・倉庫、または政令で定められた数量以上の危険物を貯蔵・処理する工場・倉庫は「特定既存耐震不適格建築物」に該当します。

これらの建物については、耐震診断を実施し、その結果に応じて耐震改修を行うよう努めることが求められています。

行政指導の対象となる建築物

危険物を一定数量以上保管または処理している工場・倉庫のうち、延べ床面積が500m²以上の建物は、行政から耐震改修の指示を受ける可能性があります。

危険物を扱う施設は、地震発生時に二次災害を引き起こすリスクが高いため、より厳格な管理が求められています。

耐震診断が義務付けられる建築物

政令で定める数量以上の危険物を貯蔵または処理し、階数1以上かつ延べ床面積5,000m²以上の工場・倉庫で、さらに敷地境界線から一定距離以内に位置する建物は「耐震診断義務付け対象建築物」に該当します。

これらの施設は耐震診断の実施が法律上の義務となっており、耐震性の確認が不可欠です。

工場・倉庫の耐震改修のポイント

工場や倉庫の耐震改修には、建物の構造や耐震診断の結果に応じてさまざまな方法があります。耐震改修には、比較的導入しやすい方法から大規模な工事を伴うものまであります。

そのため、それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解したうえで選択することが大切です

壁を増設して耐震性能を高める

鉄筋コンクリート造の工場・倉庫では、耐震壁を増設することで建物全体の強度を高める方法があります。コンクリート壁をバランスよく配置することで耐震性能の向上が期待できますが、その一方で建物内部の動線や作業スペースが制限される可能性があります。

内部に壁を設置できない場合は、建物の外側に控壁(バットレス)を設けることで耐震性を向上させることも可能です。

柱を補強して建物の強度を向上させる

鉄筋コンクリート造では、既存の柱を補強する工法も広く採用されています。溶接金物や帯筋を巻いてコンクリートを増し打ちする方法、鋼板を巻いてモルタルやコンクリートを充填する方法、炭素繊維シートを巻き付ける方法などがあります。

柱の強度や粘り強さが向上するため、大規模地震が発生した際の倒壊リスクを低減可能です。

ブレースを設置する

鉄骨造の工場・倉庫では、ブレース(筋交い)を追加する耐震補強が一般的です。柱と梁で囲まれた部分に斜めの鉄骨ブレースを設置し、モルタルやコンクリートを用いて接合することで、水平方向から加わる地震の力に対する耐力を高めます。

比較的効率的に耐震性能を向上できる工法として広く活用されています。

まとめ

工場や倉庫の耐震対策は、従業員の命や企業の資産を守るだけでなく、事業継続や取引先からの信頼維持にも直結する重要な取り組みです。とくに旧耐震基準で建築された建物は、大規模地震に対する耐震性能が不足している可能性があるため、早めに現状を把握することが求められます。耐震診断の対象となる建物には法的な義務や努力義務が定められており、該当する場合は適切な対応が必要です。また、耐震改修には壁の増設や柱の補強、ブレースの設置などさまざまな方法があり、建物の構造や用途に応じた対策を選ぶことが重要です。将来の地震リスクに備えるためにも、まずは建物の耐震基準や状態を確認し、必要に応じて耐震診断・耐震改修を検討しましょう。

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よくある質問

  • 耐震診断では具体的にどのようなことをするのですか?
  • 一般的には建物の現地調査(外観劣化確認・コンクリートコア採取・図面照合等)を行い、現地調査の結果を基に有資格者が耐震診断(計算)を行うそうです。
  • 耐震診断にはどのくらいの費用がかかりますか?
  • 建物の規模や構造・設計図書の有無によって違いがあり、また補助金制度利用の有無によっても違いがあるため一概には言えないそうです。
  • 耐震診断に補助金制度などはありますか?
  • 全国の各自治体で、耐震診断・耐震補強設計・耐震改修工事に対する補助制度が整備されているようです。また、一定の要件を満たす耐震改修工事を行った場合、固定資産税の減額等の優遇が受けられるそうです。
  • どんな人が耐震診断を依頼しているのでしょうか?
  • 個人住宅からマンション・ビル・ホテル・旅館・医療施設・大型商業施設など、幅広く依頼しているようです。
  • 耐震診断はなぜ重要ですか?
  • 耐震診断は、地震などの自然災害による被害を最小限に抑えるために重要です。診断を通じて、建物の耐震性能に問題がある場合には、早期に対策を講じることができるため、人命の安全や財産の保護を確保することができます。
  • 耐震診断の目的は何ですか?
  • 耐震診断の目的は、建物の耐震性能を評価することです。診断結果に基づいて、建物の耐震性向上策や補強計画を立てることが目的となります。
  • 耐震診断はどのような建物に必要ですか?
  • 耐震診断は、主に古い建物や地震対策が不十分な建物に対して必要です。地震の活発な地域や過去に大きな地震被害があった地域でも、耐震診断が重要とされています。
  • 耐震診断の結果に基づいて何をすべきですか?
  • 耐震診断の結果に基づいて、建物の耐震性能を向上させるための対策や補強工事を検討する必要があります。専門家のアドバイスや報告書に示された改修計画に従って、建物の安全性を確保するための対策をすることが重要です。