地震大国の日本において、住まいの「耐震診断」に関心を深める方が増加しています。しかし、住まいの図面が無い場合に、耐震診断を受けることは可能でしょうか。この記事では、図面が無い場合の耐震診断に焦点を当てて、依頼の可否や注意点を詳しく解説します。安全に暮らすためにも、ぜひ本記事をご一読ください。
図面なしでも耐震診断は受けられるのか
結論から言うと、図面が無くても耐震診断は受けられます。現在住んでいる家の築年数が経過している場合や、中古住宅を購入する際には、耐震診断が気になるものです。
対応の義務化
東京都は、大地震による被害を、最小限に留めるためにも、耐震診断に関する義務化を行いました。これまでは図面が無い場合、やむを得ないとされてきました。しかし、図面が無くても、耐震診断を実施する必要があるのです。
加えて、耐震診断は、住宅ローン控除の適用のために必要です。そこで、筋交いセンサーと呼ばれる機材が積極的に使用されるようになりました。耐震を正しく判断するためには、目視だけで評価をすることはできません。
筋交いセンサーを使って調査を行う
では、図面が無い場合に行われる「筋交いセンサー」による調査とは、一体どのようなものでしょうか。筋交いセンサーとは、その文字どおり、住まいのなかにある筋交いを、センサーで測定していく装置です。
筋交いは、壁の内側に設計されているものであり、センサーで全てを的確に見つけられるものではありません。筋交いの大きさや形状によって、測定値は左右されます。しかし、住まいを破壊して判断しなくても、ある程度の把握ができるため、図面の無い耐震診断に適している調査方法です。
対象物件
筋交いセンサーは、センサー装置を使って筋交いの位置を把握していくものです。そのため、家具や家電が設置されている箇所を把握するためには、妨げとなってしまうため移動させる必要があります。
中古物件への調査の場合、入居中に行うのではなく、空き家の状態で調査を実施した方が、より正確です。ただし、室内の壁がタイル仕上げとなっている場合や、金属による仕上げが行われている場合、センサーの作動が難しく、調査には適していません。
古い物件の場合、水回りがタイル仕上げとなっていることが多いため、注意が必要です。また、古民家の場合は、土壁が採用されている場合もあります。土壁も、センサーによる調査が難しいでしょう。
また、よくある「ラス網」も金属であり、センサーの調査の妨げになります。ラス網は、モルタルの下地に使われている素材で、金属網状のものです。モルタルも、かつて多くの日本家屋に使われていた素材です。
耐震診断の流れ
図面が無くても、適正に耐震診断を実施するためには、中古物件の購入は慎重に判断する必要があります。現在売り出し中の物件がある場合には、耐震診断の実施について、購入より前に可能かどうかを確認する必要があるでしょう。
また、耐震診断は面倒と感じても、住宅ローンの控除以外に、補助金や助成金が受けられる可能性もあります。多少の費用はかかっても、総合的に判断するとお得になる可能性も高いです。
購入前には、売主側に許可を得る必要がありますが、仲介する不動産会社を介して、耐震診断の強力を依頼することがおすすめです。なお、新築住宅の場合は、基本的に耐震構造をクリアしているものであり、診断は不要です。
図面がないと調査が困難なため診断前に図面を用意しよう
図面が無くても、筋交いセンサーがあれば、一部の物件は耐震診断が可能です。しかし、図面が無いことは、耐震診断において、プラスの効果をもたらすことはありません。本来なら、図面に筋交いの位置などは記載されており、適切な耐震診断を実施するなら、図面は必要不可欠なものです。
現地調査でリカバリーできる部分もありますが、より精密な耐震診断を行うなら、解体を伴う診断法を検討する必要もあります。
とくに、耐震に疑問があり、今後の穏やかな生活のために「耐震計画」を作成のうえで、リフォームを行う予定なら、解体作業中に補強計画を正しく立案する必要があるでしょう。こうした点から見ても、できる限り「図面を用意すること」が望ましいのです。
不要な工事を未然に防ぐ効果もある
図面が当初は見つからなくても、中古住宅の売主側の協力を得ると、発見できる可能性があります。耐震の補強工事を行う際には、図面の有無によって、補強工事の費用に大きな差額が生まれる可能性があります。
耐震工事に影響しない施工にもかかわらず、高額のリフォーム代を請求されるなどのトラブルを防ぐためには、図面の有無が大きなカギとなります。また、耐震に関する工事を実施すると決めたら、適切な講習をクリアしている建築士による耐震診断が欠かせません。
耐震リフォーム済みでも注意を
中古物件のなかには、耐震リフォームが済んでいる物件があります。耐震補強が済んでいる物件を購入したい場合は、報告書や耐震改修工事の計画書を必ずチェックするようにしましょう。
まとめ
この記事では耐震診断について、図面が無い場合の診断の有無を詳しく解説しました。図面が無くても、筋交いセンサーを活用すれば耐震診断は可能です。しかし、筋交いセンサーは万能ではあるものの、すべての物件の耐震診断をこなせる機器ではありません。
適切に耐震診断を実施するなら、基本的には「図面をお手元に用意すること」がベストです。中古物件の場合は、売主側にも協力を依頼し、図面をなるべく用意しましょう。