みなさんも知ってのとおり、日本は地震多発国ゆえに、日常生活のなかでも、万が一のときに備えた地震対策は不可欠です。住まいづくりでいえば、住宅の耐震性も重要な問題です。今回の記事では、耐震性をはかるひとつの目安として、簡易耐震診断について解説します。依頼方法や料金相場などにも触れるので、ぜひ一読してみてください。
耐震診断には3つの種類がある
はじめに、耐震診断とはいったいどんなものなのでしょうか。耐震診断は、旧耐震基準をもとに設計し、建てられた建築物に対し、新耐震基準によって、一定レベルの耐震性があるかチェックすることです。
旧耐震基準をベースにしてつくられた建物は、震度6強~7レベルの地震が発生すると、倒壊のリスクが格段に高いといわれています。そのまま放置しておけば、将来的に甚大な被害も避けられません。
大地震に備えて、改修補強工事が必要になります。耐震診断とは、その際のすべての土台になる指標と考えるとわかりやすいでしょう。耐震診断には、一般診断、精密診断、簡易耐震診断、3種類あります。そのなかで、いちばんポピュラーなのは、一般診断です。
新耐震基準に照らし合わせながら、建物の外観から軒下、天井裏にいたるまで、目視によって診断していきます。改修すべきどうかを判別するのが主な目的で、建物自体に手を加える作業は原則的にありません。
精密診断は、文字どおり、建物の内部構造まで、細かくチェックする診断法です。場合によっては、壁や天井などを剥がす作業もあり、一般診断に比べると割高傾向にあります。ちなみに一般診断は10万円、精密診断は20万円ぐらいの予算を見込んでおきましょう。
最後の簡易耐震診断は、行政を通じて専門家に依頼するか、あらかじめ用意されたアンケート形式の設問に答えるセルフチェックという方法です。ほとんどが無料なので、気軽に試せるのが大きな特徴となっています。
簡易耐震診断は安い?依頼する方法も解説
耐震診断の中身がわかったところで、次は、簡易耐震診断についてさらに詳しく紹介していきます。簡易耐震診断は、各自治体が、一大事業として推進する耐震対策のひとつです。明石市のケースを例にしましょう。
明石市といえば、1995年に発生した阪神淡路大震災の震源地にも近く、深刻な被害を受けた街です。簡易耐震診断推進事業と銘打って、住宅の耐震化促進のため、簡易耐震診断の希望者に対して、耐震診断技術者を派遣する取り組みを実施しています。
建築工法によって一部例外はありますが、対象は、1981年5月31日以前に着工した住宅です。気になる診断費用は無料です。申し込みから診断の流れは、以下の通りです。まずは、サイト上から簡易耐震診断申込書と、耐震診断技術者名簿を印刷しましょう。
市役所の建築安全窓口でも配布されているので、ネット環境のない方は直接手に入れてください。次に、名簿のなかから、任意で耐震診断技術者を1名選びます。注意しておきたいのは、申し込み前に、選択した耐震診断技術者に、業務の依頼が可能かどうか、あらかじめ自分で確認することです。
続いて、簡易耐震診断申込書、耐震診断技術者名簿に必要事項を記入したうえで、権利書の写し、家屋の登記簿謄本の写し、建築確認通知書の写し、固定資産課税台帳の写し、いずれかをひとつ、書類とともに市役所へ提出します。
申し込みを受け付けてから2~3週間後に、依頼した耐震診断技術者から連絡が来るので、都合のよい診断日時を伝えてください。指定日時に耐震診断技術者が訪問し、調査を実施すると、診断後、耐震診断報告書が送られてきます。
診断の結果、評価の目安がやや危険を示す1.0未満だった場合、耐震改修工事の検討が欠かせません。もちろん、ほかの地域であれば、内容やプロセスも変わってきます。現在、暮らす自治体に改めて問い合わせする必要があります。
簡易診断なら自分でもできる?チェックすべき項目とは
専門家へ依頼する以外にも、自分でできる簡易耐震診断もあります。その際には、国土交通省が監修する、わが家の耐震診断を利用しましょう。この診断では、10項目にわたって、チェックポイントがあります。
1981年以降に建てられた家か、これまで大災害に遭ったことはあるか、増築や傷んだ箇所の有無、建物平面の形状、一辺が4m以上の吹き抜けかあるかどうか、さらに、1階の外壁に注目したうえで壁の配置はバランスが取れているか、などの設問について答えてください。
すべての項目をクリアできれば、耐震性に問題はありません。ただし、3つ以上ノーチェックがあると、リフォームを含めた、耐震対策が必要です。より詳しく調べたい方は、床下や基礎、外壁など、各ポイントに絞った点検を試してみましょう。
まとめ
今回の記事では、耐震診断には、一般診断、精密診断、簡易耐震診断の3種類あることを解説しました。簡易耐震診断は、各自治体が進めている耐震対策の一環で、多くのところで無料となっています。
また、設問形式に回答するセルフチェック診断もあり、カジュアルに利用できるのも強みといっていいでしょう。日本に済むかぎり、地震に対する備えは忘れてはなりません。本稿で伝えた情報が、みなさんにとって、今後の安心、安全な暮らしにつながれば幸いです。