日本では近年、大地震が想定を超える頻度で発生しており、住宅の耐震性を正しく把握する重要性が高まっています。とくに1981年以前の旧耐震基準で建てられた建物は倒壊リスクが大きく、耐震診断で示される「Is値」を確認することが安全確保の第一歩となります。本記事では、大地震の現状とIs値の見方をわかりやすく解説します。
耐震診断で想定される「大地震」とは
日本は世界有数の地震多発国であり、その歴史は古く、720年完成の『日本書紀』にも地震の記録が残されています。耐震診断で想定される「大地震」とは、数百年に一度程度の頻度で発生する、震度6強クラスの強い揺れを指します。しかし、これはあくまで目安であり、実際の日本ではその想定をはるかに超える頻度で大地震が発生しています。
1995年の阪神・淡路大震災以降だけでも、震度6強・震度7の地震は23回発生しています。これは年に一度以上起きている計算で、もはや「数百年に一度」は現状と一致しません。近年はその傾向がさらに強まり、2024年1月〜10月だけでも、震度4以上の地震が107回(うち石川県が65回)、震度3以上なら398回にも上りました。特に2024年の能登半島地震の影響が大きく、日本列島全体で地震が相次いでいます。
さらに政府の地震調査研究推進本部は、首都直下地震・南海トラフ巨大地震が「30年以内に70%程度の確率」で発生すると公表しています。この数字は決して低いものではなく、2016年の熊本地震でさえ、発生前の確率は7.6%と低かったにもかかわらず大災害につながりました。つまり、確率が高いものは「ほぼ必ず起きる」と考えるべきなのです。
2024年1月1日に発生した能登半島地震(M7.6)では、複合災害(津波・地盤隆起・液状化・火災)によって甚大な被害が発生し、12月時点で489名(うち関連死261名)が犠牲となりました。
国土交通省の調査では、1981〜2000年の「81-00住宅」で16.9%が倒壊・大破と判定され、無被害はわずか26.5%でした。また、「生物劣化(腐朽・シロアリ)」がある住宅は被害が大きく、耐震性が大幅に損なわれていたことが報告されています。このように、大地震は「いつ起きても不思議ではない」という状況であり、自宅の耐震性を把握することは極めて重要です。
耐震診断結果の「Is値」とは
日本では、1981年に建築基準法が大きく改正され、新耐震基準が導入されました。この基準では、建物が地震や風圧などによる水平力にどれだけ耐えられるか(保有水平耐力)を重視し、建物の安全性を確認することが求められています。
しかし、1981年以前に建てられた旧耐震基準の建物は、当時の設計思想や構造計算の方法が現在とは大きく異なるため、単純に保有水平耐力だけで耐震性能を正しく評価することが難しくなります。そこで重要な役割を果たすのが、耐震診断の結果で示される「Is値(耐震指標)」です。
耐震診断の結果を見ると「Is値」という表示が確認できるでしょう。このIs値とは Seismic Index of Structureの略称で、建物がどの程度の地震力に耐えられるかを総合的に示す指標です。
この数値は、建物の強度・靱性(ねばり強さ)、形状のバランス、経年劣化といった複数の要因を掛け合わせて算出され、耐震性能を多角的に判断するために用いられていて、Is値の数字が高いほど耐震性が高いといえます。Is値の計算式は以下の通りです。
・Is=Eo(保有性能基本指標)× Sd(形状指標)× T(経年指標)
まず中心となるEoは、建物が本来持つ耐震性能を表す基礎的な数値であり、次の式から導かれます。
・Eo=C(建物の強度)× F(建物の靱性)
Cが地震力に耐える力を、Fが壊れにくさ・粘り強さを意味します。Sdは建物の形状や壁の配置バランス、Tは劣化状況や築年数などの経年変化を反映する指標です。このように、Is値は建物の現状を多方面から評価し、どれほどの地震に耐えられるのかを総合的に判断するための非常に重要な指標として活用されています。
耐震診断書からわかること
耐震診断によって算出されたIs値は、建物の地震に対する安全性を判断するうえでもっともわかりやすい基準となります。では、実際にIs値はどの程度であれば安全と判断できるのでしょうか。
震度6〜7の揺れに対するIs値の評価
建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)の告示では、震度6〜7程度の大地震が起きた場合のIs値の評価を次のように定めています。
・Is<0.3 … 倒壊・崩壊の危険性が高い
・0.3≦Is<0.6 … 倒壊・崩壊の危険性がある
・0.6≦Is … 倒壊・崩壊の危険性が低い
つまり、Is値が0.6を超えていれば、大地震でも倒壊の危険性が低いとされています。実際、1968年十勝沖地震(M7.9)や1978年宮城県沖地震(M7.4)といった大規模地震においても、Is値が0.6以上の建物が大きな被害を受けた例は報告されていません。このことからも、Is値は非常に信頼性の高い耐震診断指標であることが分かります。
一般的な住宅の場合は「Is値0.6以上」が耐震性を判断するひとつの目安となりますが、用途や規模によって求められる基準が高くなる場合もあります。たとえば文部科学省は、公立学校施設についてIs値0.7以上を推奨しています。
評価の重要性
耐震診断は人命を守ることを最優先としており「大地震時に倒壊しない」ことを目標に評価が行われます。
阪神・淡路大震災では、6,434人が亡くなり、うち約8割の約5,000名が建物の倒壊による圧死でした。とくに木造住宅では、壁量不足や壁の配置バランスの悪さ、土台と柱の接合不足(ホゾ抜け)、劣化(腐れ・シロアリ)の4つが倒壊の要因とされ、能登半島地震でも同様の傾向が確認されています。
4つのうち「劣化」は深刻で、国総研の報告でも劣化が進んだ建物ほど被害が大きいことが明確になっています。評点が低い家は、壁量不足やバランス不良、劣化などの弱点を抱えていることが多く、適切な耐震補強工事を行うことによって改善が可能です。
まとめ
日本では大地震が想定以上の頻度で発生しており、自宅の耐震性を把握する重要性がかつてないほど高まっています。とくに旧耐震基準の建物は倒壊リスクが高く、耐震診断で示されるIs値の確認が欠かせません。Is値は強度・靱性・劣化などを総合的に評価する指標で、0.6以上が大地震でも倒壊しにくい目安とされています。耐震診断を受けた方は、ぜひ一度結果をじっくりと確かめてみてはいかがでしょうか。
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引用元:https://taishin-beri.jp/
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