ビルやマンションの耐震補強工事は、木造建築に比べて大規模な工事になるため、住みながら・いながらの工事は難しいのではないかと思うかもしれません。しかし、いくつかの工法はいながらの耐震補強工事を可能としています。今回は、住みながら・いながら工事が可能な内容や移転が必要な工事を紹介します。
CONTENTS
住みながら・いながらの工事は可能か
建物に居住したままの耐震工事を「住みながら・いながら」の耐震工事(以下、いながら工事)といいますが、こうした耐震工事は工法によって実現可能です。
いながら工事のメリット
いながら工事はオフィスや商業施設の営業を止める必要がなく、マンションの住民が仮住まいや移転をする必要もないため利便性が高い方法です。いながら工事には、休業や移転の必要がないメリットのほかに、建物を再利用できるメリットがあります。
既存の建物を撤去して新しい建物を建てるのではなく、すでにあるビルを生かして耐震補強を施すため、資材やエネルギーを大幅に減らせるためです。いながら工事はSDGsの観点から見てもメリットが多い方法だといえるでしょう。
もちろん、オフィスやマンション住民の一時的な引越し費用を省けるため、コスト面でも大きなプラスになります。
居住したままできる耐震工事
いながら工事の事例として、外部補強による耐震工事があげられます。建物の外部に補強部材を配置する外部補強であれば、建物を使用しながら耐震工事ができます。建物の外部に補強部材をつけるため、建物内部のスペースを圧迫しないメリットもあります。
近年では、鉄骨を筋交いとして配置する鉄骨ブレース補強以外に、美観を損ねにくいアウトフレーム補強を施工する事例が増えています。ビルの耐震工事にともなう休業期間を最低限に抑えられるため、テナントへの影響の緩和が可能です。
費用を抑えつつ、建物の耐震補強やリノベーションを測る方法として、今後もいながら工事の件数は増えていくのではないでしょうか。
住みながらできる耐震補強工事
木造住宅向け
・壁の耐力強化(筋交い追加・構造用合板の増し張り):室内側から施工でき、居住しながら工事が可能。
・金物補強(ホールダウン金物・柱脚金物の追加):部分的な開口で施工でき、短期間で完了。
・基礎の補修・増し打ち(一部施工):生活スペースに影響しない範囲で実施可能。
鉄骨造向け
・ブレース(筋交い)補強:室内の一部を使うだけで施工でき、テナント使用中でも工事可。
・接合部の補強プレート溶接・増しボルト施工:局所作業が中心で、建物を使用しながら補強できる。
・耐震スリットの追加:部分的な壁・梁の調整で済むケースが多い。
RC造(鉄筋コンクリート造)向け
・炭素繊維シート(CFRP)巻き立て補強:軽量で騒音・振動が少なく、入居中でも施工可能。
・鋼板巻き補強:コンクリート柱に鋼板を巻く工法。居ながら施工に向く。
・耐震スリットの設置:騒音が比較的少なく、居住者がいても工事しやすい。
仮住まい・移転が必要な工事の内容とは
仮住まいや移転が必要な工事は、一般的な耐震補強よりも大規模な工事です。具体的には、地震の揺れを軽減させるダンパーなどを設置する制震工事や、地震と建物の間に、地震の揺れを伝えにくくする免震装置を設置する工事です。
大規模な工事は長期化しやすいため、住民の仮住まいや移転が必要なケースがあります。しかし、近年は制震・免震の技術が発達したため、いながら工事で対応できるケースが増えています。
建物の価値が高く、できるだけそのままの状態で保存したい歴史的建造物は、建物を地盤から丸ごと分離して揺れを建物に伝えない「基礎下免震工法」が採用される場合があります。
基礎下免震工法もいながらで工事可能です。建物の現状や構造によって、どの工法を採用するか決まってきますが、今後は移転が不要な工事が増えると考えられます。
住みながら耐震補強工事をする際の3つの注意点
住宅にそのまま住みながら耐震補強工事を行うケースでは、とくに注意しておきたいポイントが3つあります。注意点をしっかりと把握し、いつもの暮らしに及んでしまう影響を最小限に抑えましょう。
荷物の移動先・保管場所をキープ
耐震補強を行う際は、工事をする該当箇所から家具や荷物を移動させなくてはなりません。そのため、移動ができる家具や荷物をピックアップしたり、いらないものであれば処分を検討するなど、事前の準備が必要となります。
また、臨時でレンタル倉庫の利用を検討するのも有効です。移動プランを計画的に立て、工事中も自分たちの生活スペースを維持できるようにしましょう。
工事個所・範囲・スケジュールの確認
予期せぬトラブルを防止するためにも、耐震補強工事がどの場所でどのような手順で実施されるのか、開始前にしっかりと把握しておく必要があります。
たとえば、水道や電気といったライフラインの使用制限や、追加工事があるかどうかは事前に確認しておくといいでしょう。
快適な暮らしを守る防音・防塵対策
耐震補強工事の際には、どうしても騒音やほこりの発生などは回避できません。そのため、ブルーシートや空気清浄機などを使用しての対策が必要不可欠です。
また、工事が実施される時間帯は、可能な限り外出するというのもひとつの手です。ただし、定期的な外出が難しいお年寄りや小さな子供がいる家庭では、それぞれに合わせた対策が必要でしょう。
まずは耐震診断を受けてみよう!
建物の耐震工事が必要か否かを判断するには、耐震診断を受ける必要があります。近年、日本各地で大規模な地震が頻発しており、建物の耐震性能に対する関心が高まっています。
とくに、1981年(昭和56年)以前に建築された建物は、現在の耐震基準に比べて耐震性能が低いため、大地震の際に深刻な被害を受ける可能性が高いです。ここでは、年々強化されている耐震基準の内容と耐震診断を受けるメリットを解説します。
大地震をきっかけに強化される耐震基準
1995年の阪神・淡路大震災では、旧耐震基準で建てられた建物に被害が集中しました。建築基準法や各種設計基準は、過去の大地震を教訓に改定されています。
たとえば、1968年の十勝沖地震を受けて鉄筋コンクリート造柱の帯筋が強化され、1978年の宮城県沖地震を契機に1981年に現在の新耐震基準が定められました。しかし、旧耐震基準で建てられた建物が今もなお多数存在しているため、耐震性能の確認や必要に応じた補強が重要です。
義務化される耐震診断
耐震診断は、旧耐震基準で設計された建物の耐震性能を現行の基準と比較し、判定するものです。非木造建物の場合、1次から3次までの診断法があり、それぞれ精度が異なります。
もっとも一般的な2次診断法では、柱と壁のコンクリート強度や鉄筋量を用いて計算し、耐震性能を評価します。診断結果をもとに、耐震改修の必要性や方法の検討が可能です。
2013年には耐震改修促進法が改正され、不特定多数の人が利用する建物や避難に配慮が必要な建物のうち、大規模な建物に耐震診断が義務付けられました。
また、2019年には一定の高さと長さをもつ塀にも耐震診断が義務化されています。これらの法改正は、建物の安全性を確保し、地震災害を防ぐために重要な役割を果たしています。
耐震診断を受診するメリット
建物の所有者や管理者は、耐震診断の受診で建物の状態を正確に把握し、長期的な修繕計画を立てられます。耐震性能の向上により、地震リスクに備え、建物の資産価値の維持が可能です。
さらに、建物の安全性の確保で、利用者の安心につながります。耐震診断は建物の安全性を確保し、地震災害を防ぐために欠かせません。
旧耐震基準で建てられた建物はもちろん、新耐震基準の建物でも劣化が懸念される場合は、耐震診断の受診を強く推奨します。建物の所有者や管理者は、耐震診断の必要性を理解し、積極的に受診を検討しましょう。
まとめ
今回は、住みながら・いながらの耐震補強工事は可能なのかをテーマに、ビルやマンションなど鉄筋の建物の耐震補強工事についてまとめました。工事のための一時退去や休業の可能性が、耐震工事実施のネックとなってきましたが、近年はいながらで施工できる工法が大幅に増えています。多くの地震に見舞われてきた日本では、耐震基準が年々厳しくなっています。ビルの安全性を確認するためにも、耐震診断を受けてビルの補強を検討してみてはいかがでしょうか。
-
引用元:https://taishin-beri.jp/
耐震診断についてわからない方も、とりあえずこの会社
診断実績豊富&図面なしでも診断可能
