住みながら・いながらの耐震補強工事は可能なのか

公開日:2025/01/15
いながら工事

ビルやマンションの耐震補強工事は、木造建築に比べて大規模な工事になるため、住みながら・いながらの工事は難しいのではないかと思うかもしれません。しかし、いくつかの工法はいながらの耐震補強工事を可能としています。今回は、住みながら・いながら工事が可能な内容や移転が必要な工事を紹介します。

住みながら・いながらの工事は可能か

建物に居住したままの耐震工事を「住みながら・いながら」の耐震工事(以下、いながら工事)といいますが、こうした耐震工事は工法によって実現可能です。

いながら工事のメリット

いながら工事はオフィスや商業施設の営業を止める必要がなく、マンションの住民が仮住まいや移転をする必要もないため利便性が高い方法です。いながら工事には、休業や移転の必要がないメリットのほかに、建物を再利用できるメリットがあります。

既存の建物を撤去して新しい建物を建てるのではなく、すでにあるビルを生かして耐震補強を施すため、資材やエネルギーを大幅に減らせるためです。いながら工事はSDGsの観点から見てもメリットが多い方法だといえるでしょう。

もちろん、オフィスやマンション住民の一時的な引越し費用を省けるため、コスト面でも大きなプラスになります。

居住したままできる耐震工事

いながら工事の事例として、外部補強による耐震工事があげられます。建物の外部に補強部材を配置する外部補強であれば、建物を使用しながら耐震工事ができます。建物の外部に補強部材をつけるため、建物内部のスペースを圧迫しないメリットもあります。

近年では、鉄骨を筋交いとして配置する鉄骨ブレース補強以外に、美観を損ねにくいアウトフレーム補強を施工する事例が増えています。ビルの耐震工事にともなう休業期間を最低限に抑えられるため、テナントへの影響の緩和が可能です。

費用を抑えつつ、建物の耐震補強やリノベーションを測る方法として、今後もいながら工事の件数は増えていくのではないでしょうか。

仮住まい・移転が必要な工事の内容とは

仮住まいや移転が必要な工事は、一般的な耐震補強よりも大規模な工事です。具体的には、地震の揺れを軽減させるダンパーなどを設置する制震工事や、地震と建物の間に、地震の揺れを伝えにくくする免震装置を設置する工事です。

大規模な工事は長期化しやすいため、住民の仮住まいや移転が必要なケースがあります。しかし、近年は制震・免震の技術が発達したため、いながら工事で対応できるケースが増えています。

建物の価値が高く、できるだけそのままの状態で保存したい歴史的建造物は、建物を地盤から丸ごと分離して揺れを建物に伝えない「基礎下免震工法」が採用される場合があります。

基礎下免震工法もいながらで工事可能です。建物の現状や構造によって、どの工法を採用するか決まってきますが、今後は移転が不要な工事が増えると考えられます。

まずは耐震診断を受けてみよう!

建物の耐震工事が必要か否かを判断するには、耐震診断を受ける必要があります。近年、日本各地で大規模な地震が頻発しており、建物の耐震性能に対する関心が高まっています。

とくに、1981年(昭和56年)以前に建築された建物は、現在の耐震基準に比べて耐震性能が低いため、大地震の際に深刻な被害を受ける可能性が高いです。ここでは、年々強化されている耐震基準の内容と耐震診断を受けるメリットを解説します。

大地震をきっかけに強化される耐震基準

1995年の阪神・淡路大震災では、旧耐震基準で建てられた建物に被害が集中しました。建築基準法や各種設計基準は、過去の大地震を教訓に改定されています。

たとえば、1968年の十勝沖地震を受けて鉄筋コンクリート造柱の帯筋が強化され、1978年の宮城県沖地震を契機に1981年に現在の新耐震基準が定められました。しかし、旧耐震基準で建てられた建物が今もなお多数存在しているため、耐震性能の確認や必要に応じた補強が重要です。

義務化される耐震診断

耐震診断は、旧耐震基準で設計された建物の耐震性能を現行の基準と比較し、判定するものです。非木造建物の場合、1次から3次までの診断法があり、それぞれ精度が異なります。

もっとも一般的な2次診断法では、柱と壁のコンクリート強度や鉄筋量を用いて計算し、耐震性能を評価します。診断結果をもとに、耐震改修の必要性や方法の検討が可能です。

2013年には耐震改修促進法が改正され、不特定多数の人が利用する建物や避難に配慮が必要な建物のうち、大規模な建物に耐震診断が義務付けられました。

また、2019年には一定の高さと長さをもつ塀にも耐震診断が義務化されています。これらの法改正は、建物の安全性を確保し、地震災害を防ぐために重要な役割を果たしています。

耐震診断を受診するメリット

建物の所有者や管理者は、耐震診断の受診で建物の状態を正確に把握し、長期的な修繕計画を立てられます。耐震性能の向上により、地震リスクに備え、建物の資産価値の維持が可能です。

さらに、建物の安全性の確保で、利用者の安心につながります。耐震診断は建物の安全性を確保し、地震災害を防ぐために欠かせません。

旧耐震基準で建てられた建物はもちろん、新耐震基準の建物でも劣化が懸念される場合は、耐震診断の受診を強く推奨します。建物の所有者や管理者は、耐震診断の必要性を理解し、積極的に受診を検討しましょう。

まとめ

今回は、住みながら・いながらの耐震補強工事は可能なのかをテーマに、ビルやマンションなど鉄筋の建物の耐震補強工事についてまとめました。工事のための一時退去や休業の可能性が、耐震工事実施のネックとなってきましたが、近年はいながらで施工できる工法が大幅に増えています。多くの地震に見舞われてきた日本では、耐震基準が年々厳しくなっています。ビルの安全性を確認するためにも、耐震診断を受けてビルの補強を検討してみてはいかがでしょうか。

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株式会社BERIの画像 引用元:https://taishin-beri.jp/

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会社名BERI日本建築検査協会ERIソリューション日本耐震診断協会ジャスト耐震設計さくら構造
特徴耐震診断実績多数!調査から補強設計まで一貫化で迅速かつ高品質な診断技術時代の要請に合った付加価値の高いサービスを提供する建築物の検査・評価企業業界最大手機関の子会社だから安心・信頼!高い専門性と中立性の調査診断技術多様な住宅構造で調査・診断・補強設計が可能な耐震診断に特化した専門機関50年以上の歴史を持ちリーディングカンパニーとして公平な検査を行う企業耐震に特化したプロ集団が在籍している耐震診断・耐震補強設計専門事務所耐震診断専門のプロ技術者が多数在籍する構造設計事務所
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